町田は神奈川なマインクラフト軍事部wikiです。

一緒にいる時間
高校三年生の夏、その日の 6 時間目の授業では自分たちの進路について考える時間を与
えられた。
「(進路か・・・俺は普通に大学に進学かな・・・あいつはどうだろう・・・)」
「・・・い・・・おい、相模!聞いてるか!?さ・が・み・う・く・お!!」
「うわっ!なんだよ・・・」
考え事をしていて上の空だった俺を呼ぶ声、俺はその声のほうを向いたが、すぐ目をそらし
た。俺を呼んだのは山田健太郎。俺相模芋食男の幼馴染で、片思い中の相手でもある。自分
がホモであるという事に気付いたのは中学生のころだ。クラスの友達とどんな女が好きか
という議論になったときに自分は周りのやつらとは違うという事に気付き、そのすぐ後、シ
ャンプーの CM に出ていた裸の男優を見て興奮したことで、初めて自分がホモだと気づい
たのだ。思春期真っただ中、自分がホモであるという事を誰にも打ち明けることのできない
状況の中、段々俺は反抗的になっていった。周りのやつらは俺から距離を取ったが、一人だ
け俺のことを気遣ってくれるやつがいた。山田健太郎だ。幼馴染だし当然のことなのだが、
そこで惚れてしまい、今でもこの気持ちを伝えられないままずるずる引きずっている。
「おい、目え逸らすなよ!ちゃんと話そうぜ!」
そうは言っても目を逸らさずにはいられない。こいつは気にしてないだろうが、俺にとって
は大問題なのだ。何しろ距離が近い。にやけや赤面といった現象が顔に出てないか心配で、
山田の顔を直接見られない。
「そ、逸らしてねーよ」
「ふーん、まあいいや。それよりさ、進路、どうするかもう決めてんの?」
健太郎の問いかけで進路のことを考えていたのを思い出した。いつの間にか健太郎のこと
ばかり考えていて進路のことなどとうに忘れていた。
「別に、普通だよ、近くの月見台大学にでも行こうかなって」
「あー、めっちゃ近いしなwまあ大学行くとしたらあそこしかないわな」
月見台大学とは俺達の住んでる地区から自転車で5分もかからずに行けるところにあるそ
こそこ有名な私立大学だ。50 年ほど前、資産家の碧月三吉が建てたのだ。俺がこの大学を
選んだ理由は近いから、という理由だけでなく、もし健太郎が大学に行くとしたらここ以外
にはないだろうと思ったからだ。そんなこと、直接聞けばいいのだが、俺にはそんな勇気は
なかった。下手に聞けばキモイと思われるかも、そう考えると進路を聞くなんてできなかっ
たのだ。
「芋食男は月見台かー、実は俺は自衛隊に入ろうと思ってたんだよな!」
「・・・は?」
何を言っているんだこいつは?一瞬思考が凍った。自衛隊?何故?健太郎の頭の良さなら
余裕で月見台にはいれるはず、なのに、何故?
「えっと、自衛隊って・・・」
「ああ、陸上自衛隊だよ、静岡の自衛隊基地に行ってそこで寮生活なんだ。」
そういうことを聞いているんじゃない。なんで自衛隊になろうと思ったのかを聞きたかっ
たのに、またちゃんと聞けない。健太郎の前だといつもこうだ。緊張して思ったことを口に
出せない。
「そうじゃなくて、なんで自衛隊になろうと思ったのかって・・・」
勇気を出して聞こうと思ったことを口に出した。恋をしている相手が遠く、しかも寮生活を
送ると言っているんだ。何が何でも止めたい。その一心で口を開いた。
「そういうことね、実はな、大樹が誘ってくれたんだよ、自衛隊に行かないかって」
「は?大樹?」
「そうそう、隣のクラスの、琵琶宮大樹(びわのみや たいき)だよ」
琵琶宮が誰かは知っている。でもなんで、なんでそいつなんだ?幼馴染なのに、俺から離れ
ていくのか?俺はこんなにも健太郎のことを思っているのに・・・
「そ、そうか。意外だなー、健太郎が自衛隊なんて。自衛隊は厳しいって聞くし、体に気を
つけろよ!」
「おいおいw気が早いだろ!」
「ははは・・・」
自分の気持ちを抑えて思ってもいない言葉をつらつらと並べる。冷静になって考えてみれ
ばさっき健太郎に思ったことは自分がってすぎる「幼馴染なのに、俺から離れていく」?幼
馴染だからと言って、相手を束縛できる権利なんて持ていない。「俺はこんなにも健太郎の
ことを思っている」?思っているだけで、そんなことを口にしたこともなければ健太郎に気
持ちを伝えたこともない。それなのに、俺は健太郎の目指した道をおかしいと思い、幼馴染
を疑ったとともに友達である大樹を憎みもした。俺は最悪だ。そういう考えが俺の気持ちを
心の隅に仕舞わせた。
6 時間目の授業が終わり、みんなが帰りの支度をし始めた。
「ちょっとちょっと、話聞いていたけどさ、あれでいいの?」
そう聞いてきたのは海栗屋音子(うにや ねこ)だ。ひょんなことから俺が健太郎のことが好
きだという事を見抜かれ、それ以来俺の恋を応援してくれている。
「別に、健太郎が決めたことなら・・・」
バン!海栗屋が机を思い切り叩いた。その音にビクつき、怯んでしまった。
「意気地なし!それでもアンタ恋してるの!?男なら当たって砕けろでしょ!?」
「いや、そんなこと言ったって・・・」
「あのねぇ、自衛隊に行っちゃうんでしょ、山田。そしたらもうほとんど会う機会なんて無
くなっちゃうのよ!?」
「そ、それは・・・」
「会えなくなる前に自分の気持ちを伝えるのと伝えないのじゃ全然違うじゃん!一生後悔
するよ!」
「・・・」
確かにそうだ。このまま自分の気持ちを伝えないまま時が過ぎれば、必ず後悔するだろう。
それだったら、気持ちを伝えたほうがまだマシだ。
「そうだな、そうするよ。卒業式の日にでも俺の気持ちを・・・」
「は?何言ってんの?今日、今気持ちを伝えるに決まってんじゃん!」
「は!?なんで!?」
予想もしなかった言葉に自分でもびっくりするほど大きい声が出た。今日、何故?そんなこ
と、できるわけがない。
「あのねぇ、卒業式の日なんかに言ったらそれこそ最後になっちゃうじゃん!今日言えば
まだ山田に自衛隊になるという事を思いとどまらせることもできるかもしれないのよ。そ
れにあんた、他の日になんて勇気を出せずに伝えられないでしょ、気持ち。今日せっかく気
持ちを伝える気になってるのに、今日言わずしていつ言うのよ!」
確かにそうだ。海栗屋の言うとおりだ。今日言わずしていつ言うのか。俺はもう迷わない。
「け、健太郎!」
「ん?」
緊張する。歯はガチガチだし、足はがくがく震えている。
「なんで自衛隊に入ろうと思ったんだ?本当の理由を教えてくれ!」
「・・・」
健太郎の表情に迷いが見える。
「実はな、俺、中学生のころから自衛隊が好きだったんだ。ミリタリー趣味なんて、キモが
られると思って誰にも言えなかったけど、相手が芋食男なら・・・いや、芋食男だからこそ
言うよ!」
「大樹は自衛隊好きの仲間で、俺に自衛隊に入らないかと提案してくれたんだ。未だに迷っ
てるんだけどな」
そうだったのか。健太郎も誰にも言えない秘密があったのか。健太郎が自衛隊のことを好き
という事を知らずに自衛隊になろうとしていたことを止めようとしていた自分が恥ずかし
くなる。しかし、もう後には引けない。俺も健太郎に思いを伝える。
「健太郎、よく聞いてくれ。実は俺、俺・・・」
「ん?」
「俺、お前のことが好きだったんだ!!健太郎、俺もお前に隠していたことがあったんだ。
俺、お前のことが好きなんだ!同性愛なんてキモがられるかもしれないけど、それでも俺は
この気持ちを抑えられないんだ!」
「芋食男・・・」
ああ、言ってしまった。避けられるかもしれない、キモがられるかもしれない、そう思いな
がら顔を真っ赤にして健太郎の答えを待つ。
「芋食男、ありがとう。本当に隠していた気持ちを教えてくれて。」
健太郎から思ってもいなかった返答が来て、俺は拍子抜けした。
「芋食男、俺、本当に自衛隊が好きだし、俺はその・・・いわゆるホモとかじゃないんだけ
ど、でも、芋食男のことは大好きだし、芋食男の思いは尊重したい。まずは、俺がお前のこ
とを恋愛対象として好きになれるまで、仮の恋人として、一緒にいてくれないか?」
「健太郎、俺・・・俺・・・」
嘘だろ?まさかの OK。俺はうれしさのあまり泣いてしまった。夢じゃないよな?健太郎と
付き合えることになったなんて・・・
「えっと、その・・・」
「ああ、自衛隊はやめるよ。芋食男が月見台大学に行くんだ。俺も一緒に行くよ!いいよ
な?」
「あ、ああ!もちろん!」
健太郎の好きな自衛隊になるという目標を壊してしまったことは申し訳ないけど、でも、今
は自分のことしか考えられなかった。
「健太郎その・・・」
「ん?」
「ありがとう!本当に!」
「いいんだよ、だって俺たち、幼馴染だろ?」
ざわざわ・・・ざわざわ・・・
俺の告白を聞いて周りのやつらが騒ぎ始めた。キモがられるか?俺はともかく、健太郎が避
けられるのは・・・そう思っていたがそれは杞憂に終わった。
「おめでとう!」「おめでとう!」「しあわせになれよ!」
皆が俺たちを拍手で迎えてくれた。海栗屋は勿論、実理明太(みり めいた)や及川一(おい
かわ はじめ)、柳崎館也(やなざき たてや)といったクラスメイト、いや、これだけじゃ
ない。クラスメイト全員が俺たちを受け入れてくれた。今までみんなを信じずに自分の本当
の事を言えなかった自分が恥ずかしくなってきた。
「あれれ、おかしいね。もう帰りのホームルームの時間は終わってるよ?」
廊下で待っていた後池百合子(ごいけ ゆりこ)先生が教室に入ってきた。そういえばもうと
っくのとうにもう帰りのホームルームの時間は終わっていた。
「健太郎、それじゃあ・・・」
「ちょっと!席に戻る前にやることがあるんじゃない?」
海栗屋が言う。席に戻る前にやること?なんだそれは、見当もつかない。
「おいおい、芋食男、本当にわからないのか?」
「あ、ああ・・・」
「はぁ、仕方ないな・・・」
健太郎が俺に近寄る。
俺と健太郎は唇を重ねた。

このページへのコメント

テェテェなぁ

0
Posted by ファック酒井 2020年04月16日(木) 18:50:45 返信数(1) 返信

文才あるなぁ。もう小説書いてみよう!

0
Posted by 瀬見 喜代子 2020年04月16日(木) 21:08:50

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